4. Ermitaとその周辺地域のストリート・バスケットボール
1) ErmitaとA Flores St.

図7: A. Flores St.
Plaza Del Pan Manila City
(2004.5.25)
 Ermitaという街には"Import"な人々が多くいる。エルミタのことを悪く言う意図は特にないし、筆者はこの街が好きだ。しかし、この街には外国人を対象とした数々のいかがわしい商売があり、それを仲介する人々が、日銭を稼ぐために外国人に寄ってくる。最近では韓国人観光客が目立つようになってきて、それにあわせて韓国語で呼びかける客引きもいる。またストリート・チルドレン、物乞いもいる。以前はErmitaといえばM. H. Del Pilar やA. Mabini Stが夜の一大歓楽街であったそうだが、今はそういう意味では、寂れた街となっている(※1)。


(1) A. Flores St.の風景
 上記2つのストリートに挟まれたところにA. Floresという小さな通りがあり、筆者はM. H. DelpirarとA. Floresが交差するところに住んでいた。ストリート・バスケットボールゴールは、A. Floresに設置されている。ここはM. H. DelpirarやA. Mabini Stとは違って「ローカル」な場所である。焼き鳥の煙が立ちこめ、バナナ・キュー(※2)を焼く匂い、ピーナッツを揚げる匂い、カンティーンから漂ってくるバゴーンやシニガン、アドボ(※3)の匂い、立ち小便 (※4)や、生活排水が道ばたにたまって饐えた匂いを発散させている。

 私的には、こういった風景をマニラらしいと感じる。時々車が進入してくるが、人がごった返し、様々な物で道路の3分の1位を占拠している状況では、クラクションを鳴らしながらの進行となる。バスケットボールも、そこで行われる。


(2) A. Flores St.のゲーム
図8: A. FloresSt.周辺略地図(筆者作成)
 車が通ったり、ボールが物売りの屋台に飛び込んだりすれば、プレイは中断する。小さな子を泣かせたら大人に叱られる。年齢関係なく入り乱れてプレイし、一見無秩序に見えるが、いつの間にかメンバーが交代し、全員がなんとなくプレイに参加している。こういったゲームの背景でには、子供達のグループが自分たちの秩序を持ち、大人がそれとなく監視するという構図がある。そこには、日本で最近はあまり見られなくなったであろう子供達が群れて遊ぶ姿がある。こういった子供のグループは、主に次に述べる"SK Barangay (※5)"という組織によって支えられている。

>>次へ

-------脚注---------

  1. 1992年、前市長アルフレッド・リムの就任時、街から違法な店舗を一掃した。
  2. バナナを串に刺し、甘いタレを付けて炭火で焼いたお菓子。
  3. 「バゴーン」は魚介類の内臓から作った、ご飯の付け合わせ。「シニガン」は酸味のあるフィリピン料理のスープ。「アドボ」は代表的なフィリピン料理のおかずで、鶏肉や豚肉などを煮込んだもの。
  4. 基本的には禁じられているエリアが多いが、ワイシャツ、スラックス姿のサラリーマンでも、歩いている途中、急に電信柱の陰に隠れたかと思うと、用を足している姿をみかける。だいたい、用を足される場所は決まっていて、当然、その一帯は強烈な臭気が漂っている。
  5. "Sangguniang Kabataaan Barangay"の略。(前掲書"Local Government Code" p.169.)"Kabataan"は"youth"の意。L.English (2001) "Tagalog-English Dictionary" p.262.

  6. 投稿者 MMG : 11:49 | -